東京都障害者IT地域支援センター

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■平成21年度IT支援者養成研修概要 (事務局による講義録抜粋)

基礎コース
■肢体不自由者の情報支援〜操作特性と支援機器
 講師:花岡 里美(有限会社エーティーマーケット代表)

1.支援機器とは?
 福祉用具を必要とする人の生活を支えるために利用される支援機器である。
 障害観の変化
コミュニケーション技法について
 AACとは、今ある能力を活用して最大限のコミュニケーションを引き出す技法の研究
  ●ノンテクコミュニケーション技法…機器を利用しないコミュニケーション技法
  ●ローテク(シンプルテクノロジー)コミュニケーション技法
  ●ハイテクコミュニケーション技法
まずはノンテク、ローテクコミュニケーション技法が取れないとハイテクコミュニケーション機器の使用は難しい。
きちんと意思疎通が出来ているかの確認を。コミュニケーションのためのコンピュータを支給しても本人が使えず家族が使用しているケースも多い

2.肢体不自由者が対象の日常生活用具給付項目の支援機器について
  ●情報・意思疎通支援用具
    情報・通信支援用具の中には意思伝達装置と重なるものもある
   ●携帯用会話補助装置
    合成音声方式とデジタル音声方式の2種。とくにデジタル音声方式の装置を希望する人はノンテクコミュニケーションが出来ているかを確認
   ●情報・通信支援用具
    代替マウス・代替キーボード導入の前にOSの中で解決できることもある
    量販店の汎用製品の中にも使いやすいマウスがあるので、まずはそちらを見て試してみることも大切

テクノロジー利用のポイント  支援技術機器の使用は機能回復の妨げにはならないという各種報告がなされている
 テクノロジーが意欲を引き出し、活動の意味を気付かせてくれる
 ハイテクがローテクに勝るわけではない。場面によって使い分けることが必要


■肢体不自由者の情報支援〜操作特性と支援機器(実習)
 講師:花岡 里美(有限会社エーティーマーケット代表)

△WindowsOSについている、誰もが便利な機能について
・バージョンがXPの場合
「コントロールパネル」の中の「マウス」項目で出来ること
   〃     「画面のデザイン」で出来ること
・Microsoft Wordをキーボードだけで起動してみよう

△Windowsの秘密 -特別な装置を使う前にOSで工夫出来ること
特別なものを使わなくても、備え付けられている機能で対応できる場合もある
 マウス(コントロールパネル)
   主/副ボタンの切替
   ダブルクリックの速度
   クリックロック(ドラッグが難しい方のために)
   ポインタを見失ってしまったときにすぐに見つける設定
 画面のデザイン(コントロールパネル)
   メニューバーなどの文字を拡大する
   デスクトップのアイコンを拡大する
・「アクセシビリティ」を確保するための2つの方法(XPまたはVista以降の場合)
  “コントロールパネル”→“ユーザー補助のオプション”
  “すべてのプログラム”→“アクセサリ”→“ユーザー補助”
・コントロールパネル→ユーザー補助のオプション“キーボード” 複数のキーを同時に押さなくてもよい設定やキーを押してから入力が認識されるまでの時間を設定できる
・マウス テンキーをマウス代わりに使用する
・画面
・サウンド情報を視覚化する
・“すべてのプログラム”→“アクセサリ”→“ユーザー補助”
・“スクリーンキーボード” 知的障害や学習障害の方などはこちらの方が使いやすいケースもある
・文字や画面を見やすくする
 このほか、IMEの手書きツールは漢字の読みを調べるのに便利

△サポートに役立つリソース(支援技術)の紹介


■重度障害者の情報支援〜コミュニケーションを助ける支援機器
 講師:花岡 里美(有限会社エーティーマーケット代表)

「重度障害者用意思伝達装置導入ガイドライン」を参照しながら、 障害特性に応じた機器の選択ポイント、意思伝達装置の種類や操作方法について学ぶ。
  ・伝の心
  ・オペレートナビ
  ・レッツチャット
  ・VOCA
  ・ボードメーカー
  ・各種スイッチ

△質疑応答
 Q:脳血管障害で高次脳機能障害の状態になり、直近の記憶が困難になった人は、これらの支援機器を使いこなすことが出来るか?
 A:パソコンなどは直感的に入力できるもの(タッチパネルやオンスクリーンキーボードなど)が使いやすいようだ。 この方たちが使いやすいものについてはまだ試行錯誤の状態。応用編でそれらを専門的に研究している先生がいらっしゃるので、その方にも尋ねてみて下さい。


■聴覚障害の情報支援 〜様々な困難さと、それに応じた支援法
 講師:益田修・野中秀一(かがやきパソコンスクール)

1.スクール紹介
 受講生のうち聴覚になんらかの障害のある人85%
 受講生が結成したパソコンボランティアサークル「かがやき友の会」の後方支援も行っている

2.個別サポートの必要性
 聴覚に障害があると情報は目から入るのみ。目を閉じると情報が入らない。
 従来ある講習会は聞こえる人向けの講習に情報保障(手話・要約筆記)をつけたスタイルである。
 しかし、その方式だと視線の移動が負担(講師・スクリーン・手話通訳・要約筆記・PCディスプレイ・テキストの6つを視線移動することになる)になり、 講座が終わっても目が疲れたとの印象を残す場合が多く講習の効果が上がらない。
 自治体主催の聴覚障害者向けIT講習会の実施が少ないのは、情報保障の費用が高いことも一因。
 かがやきパソコンスクールでは講師が手話を使い、サブ講師がパソコン要約筆記を実施。他と比べて情報保障のコストを抑えることが出来る。

3.聴こえないことによって何が起こるか
 ・聴覚障害はコミュニケーション障害・情報障害である。ヘレンケラーが言った、“聴覚障害は人と人を切り離す障害である”との言葉通り   聴こえないと周りとのコミュニケーションが疎遠になる。手話が出来る人も少ないし、筆談は手間だったり伝えられる情報量は口話に比べると圧倒的に少ない。
 ・外見から分かり難いゆえ誤解を受けやすい
  補聴器もつけたからとはいえ聴こえるわけではない。あらゆる音を拾うため、耳障りな音と感じ嫌がる人もいる。
 ・日本語獲得に壁がある
  手話に助詞がないため、手話文法を日本語に文章化するとおかしな表記になる。
  漢字のよみも苦手。同じ字を見ているだけなので音の違いが分からない。テキストを読んでも漢字の意味や内容が分からずそこで止まってしまう。 文字入力をする際も熟語を間違った読みで覚えているので変換されない。日本語能力の高い人は、幼いときから厳しくしつけられたのと読書量が多い傾向がある。
 “九歳の壁” 九歳までは聴こえない子も聴こえる子と同じようについていけるが、九歳以降論理的・概念的なものへの理解が難しくなる。 個々の名称は手話表現にあっても、それらの概念を表す手話がないため理解できない。
 エクセルの操作でも、「構成比」などというものの理解が難しい。それらが何を意味するのか説明しながら学習を進めている。 肢体に障害がないので操作は出来るけれど、それを仕事などにどうやって活かすかが難しい。
 ・社会常識、マナーのない人が多い
  土壇場でキャンセル、相手の立場を考えづらい

これらに対するサポートも必要である。

4.聴覚障害者にとってITは非常に有効な道具である
 聴覚障害者は“会う”ことが基本。ITを連絡手段として使うことにより生活が向上した
 インターネットで情報を得ることにより、情報障害が解消される
 Webカメラでビデオチャットが出来るようになり、即時双方向通信が可能になった

 ITを使った事例として、かがやきパソコンスクールのWeb上で手話ニュースを発信している。
 動画のアップロードが簡単になり、フリーの字幕挿入ソフトを使用して製作。Youtubeやニコニコ動画でも手話の動画が増えてきた。このあたりに聴覚障害者の職域の可能性があるのではないか

 セカンドライフ(ネット上の仮想社会)では自分の分身(アバター)を作り、自由に移動することが出来る。
文字での会話が基本なので聴覚障害にバリアがない。最近ではそのアバターが手話が出来るようにしようという動きがある。

 新しい技術としては、「もじもじTV」という音声を認識して字幕化するサービスが始まろうとしている。
 これらの技術が向上していけば、聴こえない人にも分かり易くなる

5.まとめ
 聴覚障害はコミュニケーション障害・情報障害であり、人と人を切り離すものである
 ITは情報格差をなくす
 一人ひとりにあったサポートを継続することが大切。
 それらが聴覚障害者の社会参加や自立に繋がっていくだろう


■「視覚障害者の情報支援 〜操作特性と支援機器」
 講師:小林崇(株式会社テクノツール)

1.支援機器の概要
1−1 スクリーンリーダーの種類と特性
  ・95Reader
  ・PC-Talker XP/PC-Talker Vista
  ・JAWS for Windows Professional
  ・Focus Talk
1−2 スクリーンリーダーに対応したソフトウェアの特性
1−2−1 音声ブラウザ
  ・ネットリーダー
  ・ホームページリーダー
1−2−2 メーラー
  ・Mm-Mail2
  ・マイメール
1−2−3 OCR
  ・らくらくリーダー
1−3 情報獲得を助ける支援機器
1−3−1 点字ピンディスプレイ
  ・ブレイルメモ
1−3−2 レコーダー
  ・SPコードリーダー
1−4 ロービジョン(弱視)の方向け支援機器
1−4−1 画面拡大ソフト
  ・ZoomText Magnifier


■「視覚障害者の情報支援 〜操作特性と支援機器」(実習)
 講師:小林崇(株式会社テクノツール)

2−1 ホームページの読み上げ
ネットリーダーを使い、Web読み上げの操作実習を行う
  基本操作説明
  お気に入りの利用
  お気に入りに追加
  ページを直接開く
  アプリケーションの終了方法
Googleで自治体のWebサイトを検索し、アクセシビリティについて検証する

2−2 メールと文書ファイルの扱い
Mm-Mail2を使ってメール受信操作。
  Mm-Mail2画面構成の説明
  すべての操作をキーボードで行う
メールに添付されたファイルを開き保存する手順を実習する

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